• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.04.22

GK金沢克彦コラム #142

GK金沢コラム連載第142回!! 「藤波辰爾、偉大なり」

藤波辰爾という緩和剤、中和剤が主役になったとき、
過去の拘り、遺恨・因縁がすべて洗い流される!
『藤波辰爾デビュー45周年記念ツアー』の開幕戦となるドラディションの4・20後楽園ホール大会の取材に行ってきた。ここ最近、日程や体調の問題もあって、取材に赴くのは新日本プロレスの興行ばかりに偏っていたのだが、今回ばかりは見逃せない大会という思いが強かったからだ。

 メインイベントの藤波辰爾&長州力&越中詩郎vsベイダー&武藤敬司&AKIRAというカードも魅力的なのだが、そこにゲストとして前田日明、木村健悟、さらにアントニオ猪木も来場するとあっては堪らない。

 正直に言うなら、レジェンドという名のレトロ興行にはあまり興味がない、懐古趣味より現在進行形のプロレスを追っていたいという主義のもと取材活動をしているのが私である。そんな私であっても、このメンバーには大いに惹かれた。

 とくに、藤波、武藤、越中はともかくとして、リングで試合をする長州の姿となると、ここ数年まったく観ていないので、バラエティ番組の長州ではなく、レスラー長州をひさしぶりにこの目で見てみたいという思いも強かった。

 ただし、ちょっと面倒くさいと感じていたのは、もの凄い数のマスコミが集まるのだろうなと予測していたこと。つまり、古いマスコミ関係者が数多くいると、必然的に頭を下げて挨拶する回数が増えるので、そこが面倒に思えるのだ(苦笑)。いやあ、こう書いてしまう私って正直者だなあ……。

 ところが実際のところ、それほど面倒なことはなく、取材陣の数もそこそこだった。その代わり、集客は凄まじくて、超満員札止め(2473人)の観客が集まった。いつも見慣れている新日本プロレスの後楽園ホール大会と比較しても、まったく遜色のない大入り。
 
 
 さらに客層も極端にオールドファンが多いわけでもなく、いい攻防にはどっと沸くし、イマイチと感じたらうんともすんとも言わない。つまり、いまのプロレスもちゃんと観ているのだろうなと思わせる質のいい観客が集まっているように感じた。

 まず、注目したのは第2試合に出場した藤波ジュニアのLEONA。彼の試合を見るのは4戦目くらいかと思う。くらいと書いてしまうのは、やはり3年前のデビュー戦(船木誠勝戦)にはグッとくるものを感じたが、それ以降印象に残る試合がなかったから。

 今回はキャリアではるかに先輩となるアラケンこと新井健一郎との対戦。3年前よりすこし分厚くなったLEONAのマットさばきはやはり父の藤波によく似ている。新井の巧妙なラフ攻撃に翻弄されつつも、ひとつひとつの技がしっかりと決まるし、まわりがよく見えている感じ。

 つまり、しっかりとマットに足がついていた。フィニッシュとなった逆さ押さえ込みもスムーズに決まった。私は「お、ドラゴン逆さ押さえ込み!」と思わず声を出し、まわりの記者数名から笑いをとった。

 藤波辰巳(当時)の凱旋当初、ドラゴンスープレックス、ドラゴンロケット、ドラゴンスクリューという3大兵器のインパクトがあまりに強烈だったせいか、藤波の技にはなんでもかんでも「ドラゴン」が冠せられていた(笑)。そのなかでも、ドラゴンリングインとドラゴン逆さ押さえ込みは、「なんじぁ、そりゃ?」の筆頭格。

 まあ、それほど若き頃の藤波にはスピードとキレがあって、他を圧倒していたということでもある。

 試合後に突っ掛けてきた新井に、番外のドラゴンスクリューを披露したLEONAは充実の表情を見せていた。記者から、「半年前の初勝利から成長したものを見せられたか?」と聞かれたLEONAがこう答える。

「どうでしょう? 自分が思うことと見てくれてる人が思うことって、凄く差があって。自分の評価に自分が納得した時点で、自分はないなと思ってやってるんで。成長、それはそっと心のなかにしまっておきたいと思います」

 やっぱり、頭がいい。こういう言葉、大げさに言うならプロレス哲学がすらすらと口をついて出るところに感心してしまう。ある意味、プロレスラーの本質を表していると思うし、父の藤波が叩き上げからスター街道を歩んでいった、その道程を理解していると思うのだ。

 ほんのすこしずつでも成長していくLEONA、偉大な父に1㎜ずつでも近づいていこうとしているLEONAに期待したい。

 メインはまさに新日本マットの歴史を彩ったスーパースターたちによる宴だった。心臓疾患を抱えているというベイダーのことを入場前から気遣っている武藤のことも印象的だったし、それを吹き飛ばすようなベイダーの大暴れが目立った。

 ベイダーvs藤波。この両選手はライバルでありながら、リングを降りるとじつにいい関係を保っていた。ブルファイターのベイダーが、それを受けの美学で迎え撃つ藤波のことを心から尊敬していたためだ。だから、藤波vsベイダー戦にかぎっては、まったくタイプが違うのにレスリングが成立していた。
>