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  • 2017.05.07

GK金沢克彦コラム #143

GK金沢コラム連載第144回!! 「プロレスラーは超人です!」

ケガ人が続出している新日本
その最前線で闘う男たちの主張とは?
 毎年恒例の『レスリングどんたく』が開催される5・3福岡国際センター大会にテレビ朝日の解説を兼ね取材に行ってきた。会場はここ数年でイチバンといっていい大入りを記録している。前日の2日に前売りチケットは完売し、当日券……しかも見切り席といって入場ステージ側に急きょ用意された、ふだんはチケットを売らない席まで完売。

 新日本プロレスの勢いは衰えるどころか、ますます人気が加速していることを証明した格好となった。ここであえて“衰える”というネガティブな表現を使ったのは、ご存知のとおり最近ケガ人が増えているから。ただし、そこが集客面でとくに影響を及ぼす要因とはならないことも理解できた。

 過去の歴史を振り返ってみればわかるように、新日本にかぎらず絶好調の団体に陰りが見えはじめてくる要因というのは、ハッキリしている。それは団体内部に政治的なゴタゴタが起こって表沙汰となり、会社と選手(現場)間に不信感が芽生え始めたとき。こうなるとマッチメイクにも影響が出てきて、リング上に影が差すようになる。

 観客、ファンは敏感だから、そこを察知する。その悪い流れが続いていくと、いつの間にかファン離れが起こってしまうのだ。唯一、2000年代に入っての総合格闘技ブームが外的要因とも言われているが、あのときはプロレス界全体が落ち込んだわけではなく、むしろプロレスリングNOAH(以下、ノア)は集客力を増していった。

 総合に大きく影響を受けて自滅しかけた新日本と、あくまで正統派プロレスの道を邁進したノア。その答えが正直に出たということだろう。

 だから現状を考えたとき、新日本には破綻的な要素がなにも見つからないのだ。親会社のブシロードがしっかりしているし、選手層は充実しており、大きなバックアップしてくれるテレビ朝日はプロレスというコンテンツを大切な売れ筋商品としてプッシュしている。いま、理想的な流れに乗っている新日本ブームがストップする要素はないし、これ以上を目指してますます期待が持てると思うのだ。

 ただし、この仕事を本業として30年以上も関わっている身からすると、やはりケガ人がつづけざまに出ていることはじつに気になる要素。周囲のメディアも徐々にそこを指摘しはじめている。

・試合の攻防が過激化しすぎている。
・バス移動を中心としたツアースケジュール(日程)がハードすぎるのではないか?

 こと、新日本に関してはこの2点が指摘されているようだ。私も、そのあたりをすこし気にするようになってきた。現場の選手たちにしても、昨日までリングで闘っていたり、タッグを組んでいた選手が突然の大ケガで入院、手術などという事態に見舞われたら、動揺するなというほうが無理だろう。取材(観戦)している側の私だって、時おりそれが頭の片隅に浮かんでくるのだから。

 3・3沖縄大会で負傷した本間朋晃のケガは、中心性頸髄損傷で現在リハビリ中。4・9両国大会の試合後に倒れた柴田勝頼の症状は、硬膜下血腫で2度の手術を受けて、現在は安静中。また、最近では飯塚高史が左足首骨折により欠場している。
 そして、新日マットではないものの、先だってDDTの5・4豊中大会(6人タッグ戦)での試合中、高山善廣がヤス・ウラノに前方回転エビ固めを仕掛けた際 に頭部から落下。救急車で緊急搬送されている。DDTサイドからの発表によると、検査の結果は頸髄損傷および変形性頸椎症で本人の意識はしっかりしてお り、会話もできる状態だという。細かい部分はわからないのだが、診断では本間と同様である。

 そこであらためて思ったことは、攻防が危険だから、頭から叩きつけたからなど、そういう原因ではなく、ごく普通の攻防のなかでも大ケガは起こり得るということ。前方回転エビ固めという基本的な丸め込み技でもそういうことが起こるのだ。

 その一件で思い出したのが、数年前の新日本『FANTASTICA MANIA』でのワンシーン。たしか、6人タッグの試合中だったと記憶しているが、ルチャリブレの流れのなかで、石井智宏が対戦相手のメキシコ選手に前方 回転エビ固めを仕掛けた。ところが、タイミングが合わなかったのか、石井の上に対戦相手が落下して尻もちをつくようなカタチとなり技が崩れた。

 その後も、試合はふつうに続行されたものの、試合後の石井はひどく落ち込んでいた。

「ダメージなんかないけど、みっともないっスよ。心が折れますよ、格好悪くて」

 WAR でのデビュー当初、まだ線の細かった石井はジュニアヘビーで奮闘していた。その経験があるから、猪突猛進に見られがちだが、ハイスピードの攻防を得意とし ているし、切り返し技も上手い。大一番になると、突然ラ・マヒストラルを披露したり、コーナーから場外へのトぺ・コンヒーロを繰り出したりと、過去の引き 出しを開けることができるのだ。

 リング上では、どこに落とし穴が待っているかわからない。高山のケガ、さらに石井の件を思い出して、プロレスに安全な技など何もないのだ、ということを思い知らされた。

 さて、選手サイドで、「攻防の激化にどこかで歯止めを」と最初に指摘したのは、米国WWE(スマックダウン)に所属する元・新日本プロレスの中邑真輔だった。その中邑の声が公になって、レスラー側、マスコミ側からもそこを問題視する声がポツリポツリと聞こえはじめてきた。

 そんななか、新日本の最前線で活躍する選手の立場で、声を大にして自己主張をしたのが現IWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロムだった。4・29別府(大 分・別府ビーコンプラザ)大会。世界のリコシェを相手に同王座4度目の防衛に成功したヒロム。リコシェを相手に素晴らしい内容で快勝したヒロムの評価が、 また大いに上がった試合でもある。
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